滋賀家庭医療学センターにおける

予防医療の推奨一覧

Information about Preventive Medicine

Presented by SCFM and Hideki Tsunoda

悪性腫瘍スクリーニング

大腸癌 (Colon Cancer)

当院では45-75歳の患者に10年毎の下部消化管内視鏡あるいは、毎年の便潜血検査を推奨する。下部消化管内視鏡は当院で実施可能であり、医療保険(3割負担)で約6300円(2100点)である。便潜血は40歳以上であれば自治体からの助成があり、患者負担500円で実施可能である。なお、さらに若年層(45歳〜49歳)への検査適応、76歳〜85歳の高齢者については検診の適応について議論のある領域であり、一律に規定しない。

  • 2021年5月18日に更新されたUSPSTFの推奨では50〜75歳へのGrade Aの推奨に加えて、新たに45-49歳に対してGrade Bの推奨が追加となった。(https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/colorectal-cancer-screening)
  • USPSTFでは76〜85歳についてはGrade Cの推奨で、個別に判断することを推奨しているが、検診が妥当と考えうる状況について、これまでスクリーニングされたことがない場合、もし大腸癌が発見された場合に治療できる健康状態であること、寿命に大きな制限を与えるような疾患を持っていないことを挙げている。(https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/colorectal-cancer-screening)
  • American Society of Cancerでは45歳〜49歳への大腸癌検診をQualified recommendation、50歳〜75歳への検診をStrong recommendationとしている(CA Cancer J Clin. 2018;68(4):250‐281. doi:10.3322/caac.21457)。
  • 下部消化管内視鏡の検診間隔10年を支持するデータとして、平均的なリスクの患者であれば、一度スクリーニングが陰性であれば、向こう10年は悪性腫瘍が見つかるリスクは極めて低いというSystematic Reveiwが存在する(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6853024/)が、経験的には、(見逃しのリスクなどを考慮し、)内視鏡医からは、より短期でのフォローアップを指示されることが多い。
  • 便潜血(免疫法)による検診の間隔や回数は各国によって微妙に異なる。例えば、米国では毎年の便潜血1日法(1回のみの提出)によるスクリーニングが提唱されている(https://www.uptodate.com/contents/screening-for-colorectal-cancer-strategies-in-patients-at-average-risk#H742539081)。また、英国では2年毎の便潜血1日法(1回のみの提出)によるスクリーニングが提唱されている(https://www.nhs.uk/conditions/bowel-cancer-screening/)。
  • 日本では助成があるものの、エビデンスがない40〜45歳については当院では特に推奨について規定しない(否定もしない)。
  • NCCNのガイドラインでは第一親等に大腸癌患者がいる場合、40歳からあるいはその家族が大腸癌と診断された年齢の10年前から下部消化管内視鏡を行うことが推奨されている。(https://www.nccn.org/professionals/physician_gls/pdf/colorectal_screening.pdf)
  • 胃癌 (Gastric Cancer)

    当院では50歳以上の患者に2-3年毎の上部消化管内視鏡、あるいは1-3年毎の胃X線検査を推奨する。年齢の上限は規定しない。上部消化管内視鏡は当院で実施可能であり、医療保険(3割負担)で約3750円(1250点)である。また、該当市町村在住の場合、50歳以上であれば自治体からの助成があり、3000円(70歳以上は無料)で受けることもできる(その場合は患者から町に申請してもらう必要あり)。胃X線検査は当院では実施不可能で、保健センターでの実施となるが、40歳以上であれば、自治体から助成があり、1000円で実施可能である。

  • 国立がん研究センターが作成した「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン2014年版」では上部消化管内視鏡、胃X線検査についてもが共にグレードBの推奨となっている(http://canscreen.ncc.go.jp/guidelin/igan.html)が、上部消化管内視鏡が当院で実施可能であることから、当院では胃X線ではなく上部消化管内視鏡を推奨することが多い。
  • 胃X線で異常があった場合には上部消化管内視鏡による精査が必要である。日本消化器がん検診学会の2016年度の報告によると胃X線検査の要精検率は5.7%、胃癌発見率は0.07%となっている(http://www.jsgcs.or.jp/publication/publication/index_past)。
  • 諸外国(米国や英国)では胃癌の有病率が低い(10万人あたりのincidence rateは日本では27.5人、米国4.1人、英国3.9人である https://gco.iarc.fr/today/home)ため、胃癌は対策型検診(Population base screening)として推奨されていないことは認識しておく。対策型検診として、胃癌検診が導入されている国は日本の他には韓国、ベネズエラ、チリなどがある。
  • 乳癌 (Breast Cancer)

    当院では40-74歳の女性に2年毎のマンモグラフィーを推奨する。検査は保健センターで定期的に行われる他、指定のクリニックでも受けることができる(当院では不可)、検査費用は助成があり、40-49歳は患者負担2000円、50歳以上は患者負担1500円である。

  • USPSTFでは50-74歳の女性を対象に2年毎のマンモグラフィー単独法が推奨されている(Grade B)が、40-49歳についてはGrade Cとなっており、特に両親や姉妹などに乳癌の家族歴がある場合には症例に応じて検討することが推奨されている。(https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/breast-cancer-screening)
  • 2023年5月9日にUSPSTFから発表されたDraft Recommendationでは、40-74歳の女性を対象に2年毎のマンモグラフィー単独法を推奨しており(Grade B)、推奨年齢が引き下げられている。(https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/draft-recommendation/breast-cancer-screening-adults)
  • 国立がん研究センターが作成した「有効性評価に基づく 乳がん検診ガイドライン 2013年度版」ではマンモグラフィ単独法(40-74歳)、マンモグラフィと視触診の併用法(40-64歳)がいずれもグレードBととなっている。検診間隔については特に言及されていない。(http://canscreen.ncc.go.jp/guideline/nyugan.html)
  • 当院では2年毎に助成の対象となることを鑑み、2年毎の実施を推奨している。
  • 子宮頸癌 (Cervical Cancer)

    当院では21-65歳の女性に2年毎の細胞診を推奨する。検査は保健センターで定期的に行われる他、指定のクリニックでも受けることができる(当院では不可)。検査費用は助成があり、集団検診では患者負担1000円、個別検診では患者負担1700円である。

  • USPSTFでは21〜29歳の女性に3年毎の細胞診単独法を、30〜65歳の女性には3年毎の細胞診単独法、5年毎の細胞診・HPV検査併用法、5年毎のHPV検査単独法を推奨している(いずれもGrade A)(https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/cervical-cancer-screening)。
  • 国立がん研究センターが作成した「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン2019年度版」では、20〜69歳女性への2年毎の細胞診単独法、30〜60歳女性への5年毎のHPV検査単独法が推奨されている(いずれも推奨グレードA)、一方で30〜60歳女性への5年毎の細胞診・HPV検査併用法については偽陽性の増加を理由に弱い推奨となっている(推奨グレードC)(http://canscreen.ncc.go.jp/guideline/nyugan.html)。
  • 当院では検査へのアクセスと日本における助成体制を考慮し、2年毎の細胞診単独法を推奨している。
  • 結果に異常があった時のフォローアップとしてASCCPのガイドライン(https://www.asccp.org/management-guidelines)、モバイルアプリ(https://www.asccp.org/mobile-app)は有用である。
  • 肺癌 (Lung Cancer)

    当院では50-80歳かつ20Pack-Yearの喫煙歴がある喫煙者または15年以内に禁煙した非喫煙者に対して、年に1回の低線量CTを推奨する。なお、禁煙後15年経過した場合にはスクリーニングを中止する。低線量CTは近隣の医療機関への紹介となり、医療保険(3割負担)で約4400円(1470点)である。

  • 2021年3月9日にUSPSTFの推奨が更新され、「50〜80歳かつ20Pack-Yearの喫煙歴がある喫煙者または15年以内に禁煙した非喫煙者に対して、低線量CTを推奨する(Grade B)」とスクリーニングの対象範囲が拡大された。(https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/lung-cancer-screening)
  • またUSPSTFでは、禁煙後15年以上経過している場合や、寿命や手術耐用性に影響を与える他の健康問題がある場合にはスクリーニングを中止することを提案している。
  • 国立がん研究センターの作成した有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン(2006年度)では日本での複数の症例対照研究の結果をもとに、胸部X線と喀痰細胞診でのスクリーニングを推奨している(グレードB)一方で、低線量CTについては死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分であるとの理由でグレードIとしている。
  • 諸外国では胸部X線による年1回のスクリーニングが死亡率を減らさなかった(JAMA. 2011;306(17):1865-1873. doi:10.1001/jama.2011.1591)という研究に基づき、胸部Xpでの肺癌スクリーニングに対して否定的な立場をとっていることは認識しておく必要がある。
  • 日本では、感染症法により市町村が65歳以上の住民に対して結核定期健診を行うこととなっている(結核検診の有用性についてはここで議論しない)ため、この年齢層に対しては毎年の胸部Xpが実施される場合があるが、肺癌検診としては感度が不十分であるという認識を持つこと。
  • 低線量CTの被曝量については、胸部単純撮影に比べて吸収線量で約3-10倍、実効線量で20-40倍に相当すると報告されている(日放技学誌/ 57巻, 8号, 939-46頁/ 発行年 2001年)、また、USPSTFは非低線量CTについて、被爆の面から健常者への検診として用いるべきではないと言及している。
  • 検査後のフォローアップについては日本CT検診学会の低線量CT による肺がん検診の肺結節の判定基準と経過観察の考え方第5版を参考にすることが多い(https://www.jscts.org/pdf/guideline/gls5th201710.pdf)。
  • 前立腺癌 (Prostate Cancer)

    当院では50歳〜70歳の男性に対して、PSA採血を状況に応じて検討する。スクリーニングの間隔については一律に規定しない。PSA採血は当院で実施可能である。竜王町では、50歳〜74歳の患者に対しては集団検診時にのみ自治体からの助成があり、1500円で実施可能である。70歳以上の男性に対しては原則検査を推奨しない。

  • USPSTFでは70歳以上はGRADE D、55-69歳はGRADE Cとなっている(https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/prostate-cancer-screening)。
  • 国立がん研究センターの作成した有効性評価に基づく前立腺がん検診ガイドライン(2008年度)では、対策型検診として推奨されていない(グレードI)(http://canscreen.ncc.go.jp/guideline/zenritsusengan.html)。
  • 日本泌尿器科学会の前立腺がん検診ガイドライン2018年度版では、PSA採血による前立腺癌検診に非常に積極的な立場であり、任意型検診として40歳〜、対策型健診として50歳〜を推奨しているものの、検査間隔についての記載はない。(https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/32_prostate_cancer_screening_2018.pdf)
  • 上記のように、各国、各医療機関、各プロバイダーごとに意見の大きく異なる領域であり、当院では50〜69歳の男性患者に対するPSA採血による前立腺癌検診について検査の可否を一律に規定しないこととした。なお、70歳以上については検査の害が上回るかもしれないというUSPSTFのStatementを参考に原則検査を推奨しないこととした。
  • その他のスクリーニング・カウンセリング・予防的投与

    禁煙 (Smoking cessation)

    当院では全ての患者に対して喫煙の有無のスクリーニングを行い、喫煙者に対しては禁煙外来受診も視野に入れた禁煙カウンセリングを行う。禁煙外来は当院で実施可能であり、12週間で5回の受診を行う(間の3回は電話診療も可)。バレニクリンを用いた場合費用は合計で約18000円(初診料、再診料、処方箋料除く)である。

  • 成人になってから喫煙をした人が30代、40代、50代で禁煙すると余命がそれぞれ10年、9年、6年延びるとされており、若ければ若いほど禁煙の意義は大きい(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmra1308383)。
  • 禁煙外来の適応条件については、厚生労働省のe-ヘルスネットを参照のこと(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-06-007.html)。
  • 1本/日まで減煙したとしても、1箱/日の半分の血管リスクが残る(http://www.bmj.com/content/360/bmj.j5855)というデータがある。
  • 3分以内の短い声掛けであっても患者の禁煙率を上げたという弱いエビデンスがあり、こまめな情報提供を心がける(U.S. Department of Health and Human Services のClinical Practice Guideline Treating Tobacco Use and Dependence: 2008 Update)。
  • 加熱式タバコ(heated tobacco products)と電子タバコ(electronic cigarettes)を合わせて、新型タバコと呼ぶことが多い。日本ではニコチン入りの電子タバコは規制があり、販売されていない(例えばIQOS、gloなどは全ては加熱式タバコである)。日本呼吸器学会の提言にもある通り加熱式タバコや電子タバコが紙巻タバコよりも健康リスクが低いという証拠はない(https://www.jrs.or.jp/uploads/uploads/files/citizen/hikanetsu_kenkai_kaitei.pdf)。
  • 骨粗鬆症 (Osteoporosis)

    当院では65歳以上の女性、危険因子を有する65歳未満の閉経後〜閉経期の女性、70歳以上の男性、危険因子を有する50-70歳未満の男性に対して、DEXAによる骨密度測定を推奨する。DEXAは近隣の医療機関で実施可能であり、3割負担で約1400円程度である。

  • USPSTFでは、65歳以上の女性、および骨粗鬆症性骨折の危険因子をもつ65歳未満の閉経後女性へのスクリーニングを推奨している(Grade B)一方、男性についてはデータ不十分(Grade I)となっている。危険因子とは股関節骨折の家族歴、過度なアルコール摂取、低体重などを指し、一つでも当てはまる場合はFRAXなどでのリスク評価ツールでで評価することを推奨している(https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/osteoporosis-screening)。
  • 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会による骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版では上記に加えて、70歳以上の男性、危険因子を有する50-70歳未満の男性についても骨密度測定の有効性を指摘している。また危険因子としてはアルコール(3単位以上)、現在の喫煙、大腿骨近位部骨折の家族歴をあげている。(http://www.josteo.com/ja/guideline/doc/15_1.pdf)
  • 当院では日本の推奨に従い、男性患者についても状況に応じてDEXAを提案している。
  • 高血圧 (Hypertension)

    当院では18歳以上のすべての患者に血圧測定のスクリーニングを推奨する。40歳未満では3-5年毎、40歳以上は年に1回のスクリーニング測定を推奨する。

  • USPSTFでは18歳以上の患者へのスクリーニングがGrade Aとなっている(https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/high-blood-pressure-in-adults-screening)が、小児患者における血圧のスクリーニングは十分なデータがない(https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/blood-pressure-in-children-and-adolescents-hypertension-screening)と結論づけている。
  • 転倒予防 (Prevention for falling)

    当院では65歳以上の高齢者全てに年に1回の転倒リスクに関する問診(過去1年間の2回以上の転倒歴、起立時や歩行時の不安定性、転倒による医療機関受診歴)、また必要に応じてTimed Up and Go Testによる筋骨格機能の評価を推奨する。

  • 問診の詳細についてはAm Fam Physician 2017;96:240-247.を参照。Timed Up and Go Testは椅子に座った状態から立ち上がり、3m歩行した後にターンして再度椅子に座るまでの時間を測定する。13.5秒以上で転倒リスクが高いと判定する。
  • USPSTFでは転倒のハイリスク患者ではExercise intervention(Grade B)、Multifactorial intervention(Grade C)が推奨されている。当院では当院での通所リハビリテーション(介護保険の使用)、竜王町国民健康保険診療所での、外来リハビリテーション(医療保険)の利用につなげることが可能であり、リハビリスタッフと相談の上で、紹介を検討する。
  • 腹部大動脈瘤 (Aortic aneurysm)

    当院では65-75歳の一度でも喫煙歴のある男性に腹部超音波によるスクリーニングを勧める。検査は一度のみとし、もし異常がなかった場合は再スクリーニングは実施しない。検査は当院で実施可能であり、3割負担で約1600円(530点)である。

  • USPSTFでは、 65-75歳の一度でも喫煙歴のある男性に1回限り超音波でのスクリーニングを推奨している(Grade B)、一方で喫煙歴のない65〜75歳の男性については、個人の状況に応じて検討することを推奨している(Grade C)。女性については、喫煙歴もAAAの家族歴もない場合は不利益が利益を上回る可能性が高いためスクリーニングを推奨しない(Grade D)一方で、喫煙歴や家族歴のある65〜75歳の女性については推奨を判断するために十分なデータがない(Grade I)と結論づけている。(https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/abdominal-aortic-aneurysm-screening)
  • 糖尿病 (Diabetes)

    当院では35-70歳の体重過多・肥満成人に対して3年に1回の血液検査を実施する。血糖は国民健康保険の特定健診の血液検査に含まれており、該当者は可能な限りこの補助を用いて検査を行うこととする。検査は当院で実施可能であり、国民健康保険の特定検診では40歳-74歳は500円、75歳以上は無料で受けることができる。

  • USPSTFは40-70歳の体重過多・肥満成人に対して3年毎の血液検査を推奨していたが、2021年8月24日の改訂で対象年齢を35歳からに引き下げた(Grade B)(https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/screening-for-abnormal-blood-glucose-and-type-2-diabetes)。
  • 当院では、日本における公的補助の現状を鑑みて、脂質と合わせて毎年検査することも多いが、過剰検診の可能性について認識が必要である。
  • 脂質代謝異常症 (Dyslipidemia)

    当院では40-70歳の成人に対して5年に1回の血液検査を推奨する。脂質は国民健康保険の特定健診の血液検査に含まれており、該当者は可能な限りこの補助を用いて検査を行うこととする。検査は当院で実施可能であり、国民健康保険の特定検診では40歳-74歳は500円、75歳以上は無料で受けることができる。

  • USPSTFでは脂質代謝異常症という項目はなく、Statin Use for the Primary Prevention of Cardiovascular Disease in Adults: Preventive Medicationという項目であくまで血管リスクの評価の指標の一つとして、LDLコレステロール値があげられている。血管リスク評価については、問題がなければ40歳から5年毎の再評価が提案されている。(https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/statin-use-in-adults-preventive-medication)
  • 当院では、日本における公的補助の現状を鑑みて、脂質と合わせて毎年検査することも多いが、過剰検診の可能性について認識が必要である。
  • スタチンの使用については、米国と日本で大きく診療が異なるということは認識しておく必要がある。例として、米国で血管リスクの高い患者にはアトルバスタチン(リピトール)40-80mg/day、ロスバスタチン(クレストール) 20-40mg/dayと日本では使われない高用量のスタチンが使用されている。一方で、米国内でもスタチン開始の推奨には学術団体により差が見られる。USPSTFでは、1)40-75歳の患者で2)1つ以上の血管リスクがあり3)10年の心血管イベント率が10%を超える場合にスタチンを推奨している(https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/statin-use-in-adults-preventive-medication)一方で、2019年のACC/AHAのガイドライン(https://www.jacc.org/doi/pdf/10.1016/j.jacc.2019.03.010)では、40-75歳で10年の心血管イベント率が7.5%以上の場合とスタチン開始の閾値が低い。ACC/AHAでは40-75歳で糖尿病がある場合にはLDLコレステロールや血管リスクに関わらずスタチンの開始を推奨している。
  • うつ病 (Depression)

    当院では12歳以上の全ての患者に対して、これまで一度もスクリーニングが検討されていない場合、何らかのリスクファクターがあると考えられる場合にうつ病のスクリーニングを検討する。スクリーニングはPHQ2(Patient Health Questionnaire 2)、PHQ-9に加えて、高齢者にはGDS(Geriatric Depression Scale)、産後や妊娠中の女性に対してはエジンバラ産後うつ自己評価票などを用いて実施する。

  • USPSTFでは12歳〜18歳の思春期・青年期の若者、全ての成人に対してうつ病のスクリーニングを推奨している(いずれもGrade B)(https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/depression-in-adults-screening https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/depression-in-children-and-adolescents-screening)
  • うつ病のリスクファクターとして、若年〜中年、女性、白人以外、Undereducated people(十分な教育を受けられなかった人々)、離婚後、非雇用者、合併症(不眠症、他の精神疾患、家族歴、悪性腫瘍、心疾患など)があげられている。
  • 不安症 (Anxiety)

    当院では8歳以上の小児・青年期の患者、全ての成人を対象に不安症(Anxiety)のスクリーニングを推奨する。

  • USPSTFでは8歳以上の小児・青年期の患者(Grade B)と成人(Grade B)に対して不安症(Anxiety)のスクリーニングを推奨している。(https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/anxiety-adults-screening)
  • USPSTFでは成人へのスクリーニングツールとして、Generalized Anxiety Disorder (GAD) scale, Edinburgh Postnatal Depression Scale (EPDS) anxiety subscale, Geriatric Anxiety Scale (GAS), and the Geriatric Anxiety Inventory (GAI)を、小児・青年期の患者へのスクリーニングツールとして、Screen for Child Anxiety Related Disorders (SCARED) (global anxiety and any anxiety disorder) and the Patient Health Questionnaire–Adolescent (GAD and panic disorder)を提案している。
  • 性感染症(淋菌、クラミジア) (STD - Gonorrhea and Chlamydia)

    当院では性感染症のリスクが高い女性に対して、尿検査あるいは膣、尿道検体を用いた核酸増幅検査による性感染症(淋菌、クラミジア)を推奨する。

  • USPSTFでは①24歳未満の性交渉歴がある女性、②24歳以上で性感染症のリスクが高い女性に対して性感染症(淋菌、クラミジア)が推奨されている(Grade B)が、当院では、日本の現状では特に①の患者全てに検査を推奨することは現実的ではないと考える。
  • USPSTFではリスク因子として、新規または複数のセックスパートナーや性感染症のあるセックスパートナーの存在、コンドームの不使用、STIの罹患歴、性行為によって金銭やDrugを得ていることなどをあげている。(https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/chlamydia-and-gonorrhea-screening)
  • 性感染症(梅毒) (STD - Syphilis)

    当院では性感染症リスクの高い女性患者に対して、血液検査(トレポネーマ検査+非トレポネーマ検査)による性感染症(梅毒)のスクリーニングを推奨する。

  • USPSTFでは全ての妊娠している女性、感染のリスクが高い人々に対して、梅毒のスクリーニングを推奨している(いずれもGrade A)。USPSTFではリスク因子として、男性のセックスパートナーを持つ男性、HIV患者に加えて、投獄歴や商業的なセックスワークの経験、地理、人種/民族、29歳未満の男性であることなどをあげている。(https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/syphilis-infection-in-nonpregnant-adults-and-adolescents)
  • 日本では妊婦については通常産婦人科の初診で適切なスクリーニングが行われている。
  • アルコール (Alcohol)

    当院では全ての飲酒者に対して、危険な飲酒についてのスクリーニングを行う。スクリーニングはAUDIT-CやCAGEなどの問診によって行う。

  • USPSTFでは妊婦を含めて18歳以上の全ての成人に対して、危険な飲酒についてのスクリーニングを行い、陽性であった場合には簡単なカウンセリングを行うことを推奨している(Grade B)(https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/unhealthy-alcohol-use-in-adolescents-and-adults-screening-and-behavioral-counseling-interventions)
  • 肥満 (Obesity)

    当院では全ての肥満患者に対して、減量や運動など一般的な指導を行う。

  • USPSTFではBMI35以上の患者に対して、Multicomponent behavioral therapyが推奨(Grade B)されているが、日本に直接当てはめることは難しい。
  • HCV感染 (HCV infection)

    当院では40歳-79歳のこれまで検査を受けたことがない患者に対して、HCV感染のスクリーニングを推奨する。40歳以上では助成があり、集団健診の際に患者負担700円でHBVとHCVが検査可能である。

  • USPSTFでは、18-79歳の成人患者に対してHCVスクリーニングが推奨されている一方、HBVに関しては成人についてはハイリスクな患者のみに推奨されている。
  • 妊婦への葉酸 (Folate for pregnant women)

    当院では妊娠を希望する全ての女性に葉酸の予防内服を推奨する。葉酸については処方薬か、市販薬のどちらでも構わない。

  • USPSTFでは全ての妊娠計画中または妊娠可能な女性に対して、0.4〜0.8 mgの葉酸の摂取を推奨している(Grade A)。(https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/recommendation/folic-acid-for-the-prevention-of-neural-tube-defects-preventive-medication)
  • ワクチン

    肺炎球菌ワクチン

    当院では65歳以上の高齢者、該当する基礎疾患(*3)のある19歳〜64歳の患者に対して肺炎球菌ワクチンを推奨する(PPSV23、PCV13ともに当院で実施可能である)。65歳以上の高齢者に対してはPPSV23の接種を推奨する。PPSV23の再接種による臨床的な有効性のエビデンスは明確になっていないか、症例に応じて5年後の再接種を検討する。PPSV23の初回投与は65歳、70歳、75歳、80歳(以下5年毎)になる年に助成があり、4000円(助成なしの年度では当院では9900円)で実施可能である(自治体により助成金額は異なる)。PCV13については特に既往のない高齢者については推奨しないものの、免疫不全(*1)や、人工内耳、髄液瘻がある患者にはPCV13投与歴がない場合、投与を推奨する。また、PCV13株への暴露リスクが高い患者(*2)については、PCV13投与歴がない場合、患者と相談の上で投与を検討する。PCV13の適応となる患者に対しては、可能な限り、PCV13がPPSV23に先行するようなワクチンスケジュールを組むこととする。PCV13は助成制度はなく、弓削MCの場合13200円で実施可能である。患者の経済面についても十分に配慮し、患者と相談に上でどのようなワクチンスケジュールを組むか決定する。

  • 当院では基本的には2019年11月のACIPのRecommendation(MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2019;68(46):1069-1075. Published 2019 Nov 22. doi:10.15585/mmwr.mm6846a5)に従う立場をとる。
  • *1)免疫不全患者について、ACIPでは、Congenital or acquired asplenia、Sickle cell disease/other hemoglobinopathies、Chronic renal failure、Congenital or acquired immunodeficiencies、Generalized malignancy、HIV infection、Hodgkin disease、Iatrogenic immunosuppression、Leukemia、Lymphoma、Multiple myeloma、Nephrotic syndrome、Solid organ transplantが上げられている。
  • *2)PCV13株への暴露リスクについて、ACIPでは、老人ホームやその他の長期介護施設入所者、小児用PCV13の接種が少ない環境下に居住する人、小児用PCV13接種の少ない地域へ渡航予定のある者などが上げられている。日本の場合でも施設入所者の場合は相談の上でPCV13接種を検討しても良いと思われる。
  • *3)基礎疾患(*3)のある19歳〜64歳の患者について、ACIPでは*1の免疫不全患者に加えて、Alcoholism、Chronic heart disease、 Chronic liver diseas、 Chronic lung disease、Cigarette smoking、Diabetes mellitusがある場合にPPSV23の単回投与を推奨しているが、定期接種の適応とはならないことに留意が必要である。
  • 具体的なスケジューリングについては、日本呼吸器学会ワクチン検討WG委員会及び日本感染症学会ワクチン委員会のstatement内になる図を参考にする(http://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=38#01)。日本では「60歳から65歳未満の方で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される程度の障害やヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障害がある方」=「60歳~64歳の方で心臓・腎臓・呼吸器・ヒト免疫不全ウイルスで身体障害者手帳1級を持っている方」については定期接種の対象となる(役所に事前申請の必要あり)ことは知っておく。
  • PPSV23の助成制度は2023年度まで限りの時限措置で、現時点では延長の予定はないとされている。したがって、24年度以降の助成年度を待つためにPPSV23接種を差し控えることは無意味である。
  • インフルエンザワクチン

    当院では生後6ヶ月以上の全ての患者に対し、インフルエンザワクチンを推奨する。

  • 日本では厚生労働省の推奨に従い、6ヵ月-3歳未満の小児には2~4週間の間隔をおいて0.25mLを2回注射、3歳-13歳未満の小児には0.5mLを2~4週間の間隔をおいて2回注射、13歳以上の小児・成人については0.5mLを1回注射することが多い。(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/index.html)
  • ACIPでは、9歳以上の小児では1回接種を、6ヶ月以上9歳未満の小児は昨シーズンまでにインフルエンザワクチンを2回以上接種していない場合は2回接種(4週間以上の間隔)を昨シーズンまでにインフルエンザワクチンを2回以上接種している場合は1回接種を推奨している(https://www.cdc.gov/flu/professionals/acip/summary/summary-recommendations.htm)
  • また、ACIPでは、ワクチンの供給が限られている時に接種を優先すべき患者層として、6〜59ヶ月の小児患者、50歳以上の患者、慢性疾患(気管支喘息などの慢性肺疾患、心疾患、腎障害、肝障害、神経疾患・血液疾患、糖尿病を含む代謝障害)などをあげている。
  • 破傷風ワクチン

    当院では破傷風ワクチン接種歴のない患者に対して、破傷風ワクチンの接種を推奨する。当院では2200円で実施可能であり合計3回投与を推奨する。また、既にワクチンを3回接種済みの患者に対しても、10年毎に破傷風トキソイドのブースター接種を提案する。

  • 1968年以前に出生した日本人はこれまでトキソイドワクチンを打っていない可能性が高い。
  • 米国で10年に1度Tdap の接種が推奨されている。Tdapは成人へのブースター接種のみを対象として開発された3種混合ワクチンであり、副反応を抑制するためジフテリア成分と百日咳成分が減量されている。
  • HPVワクチン

    当院では、12歳(小学校6年生)〜26歳の女性に対して、HPVワクチンを推奨する。小学校6年生〜高校1年生の間は定期接種となっているものの、それ以外(任意接種)の場合、当院では18700円×3回と非常に高額となってしまうため、患者の経済面についても十分に配慮した上で、実施について相談する。

  • 添付文書では接種対象女性の年齢の上限はない。
  • 米国(CDC)では女性は26歳までの接種が推奨されている。海外では、接種年齢が45歳まではHPVワクチンの効果が認められたという報告もある(Lancet Infect Dis. 2016;16(10):1154-1168. doi:10.1016/S1473-3099(16)30120-7)。
  • HBVワクチン

    当院ではワクチンを3回接種していない全て成人患者に対して、HBVワクチンの接種を検討する。任意接種の場合、当院では6600円×3回と高額となってしまうため、患者の経済面や、リスク因子(海外渡航の頻度など)についても十分に配慮した上で、患者と接種について相談する。

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  • 帯状疱疹ワクチン(組み換えワクチン:シングリックス)

    当院では50歳以上の患者に対して水痘罹患歴を問わず組み換え帯状疱疹ワクチン(シングリックス)の接種を推奨する。自費接種であり、22000円×2回と非常に高額になってしまうため、患者の経済面についても十分に配慮した上で、実施について相談する。また、金銭面の負担を考慮した場合、60歳以上の患者に対しては水痘生ワクチンの摂取も考慮される(9900円×1回)ものの、発症抑制率、神経痛抑制率のいずれも組み換えワクチンに劣ることについては十分に患者に情報提供を行う必要がある。

  • 以下は主にACIPによるRecommendation(MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2018;67(3):103-108. Published 2018 Jan 26. doi:10.15585/mmwr.mm6703a5)を参考にしている。
  • 組み替え帯状疱疹ワクチン(シングリックス)について、添付文書では「標準として1回目の接種から2か月後に2回目の接種を行い、1回目の接種から2か月を超えた場合であっても、6か月後までに2回目の接種を行う」ことが推奨されている。
  • 帯状疱疹のワクチン接種前に水痘の既往歴があるかどうかのスクリーニング(口頭または血清検査)は推奨されていないものの、血清検査でVZV陰性であることが知られている人は、水痘ワクチン接種のためのACIPガイドラインに従う。
  • 低用量の免疫抑制療法を受けている人(例:プレドニン20mg/日未満)には組み替えワクチンの接種が推奨されるが、免疫不全者や中等度から高用量の免疫抑制療法を受けている患者に対しては有効性が不明であるためワクチン投与は推奨されない。
  • 複数のSR and meta-analysisでvaccine efficacyにおいて組み替えワクチンが生ワクチンを上回ることが証明されている(Vaccine. 2019;37(22):2896. Epub 2019 Apr 11./ BMJ. 2018;363:k4029. Epub 2018 Oct 25. )ため、シングリックスを第一選択とするものの、生ワクチンについては代替案として残している。
  • 生ワクチンについてCDCでは、ワクチン保護に関する長期的なデータが不明であることから50歳から59歳に対しては推奨されていない(米国では生ワクチン(ゾスタバックス)は2020年7月1日で販売が終了している)。